小口ットのプリントネームタグ・1枚あたりの単価を考えた製法
今から二昔ほど前は、小さな布テープにブランド名などをプリントするためには、ひとつひとつ版を組む必要がありました。そのため、大口ロットであれば1枚あたりの単価が低くなるものの、小口ロットでは逆に1枚あたりが高くついてしまうことが多かったのです。
ところが、現在はデジタル技術が進歩し、かつ普及して安く利用できるようになってきています。具体的には、発注に際してデザインを入稿するにも「フォトショップ」のデータを送れば十分ですし、スクリーン印刷、昇華転写印刷などプリントデータの設定もデジタルベースで容易におこなえますので、業者に頼んでも低いコストでできます。
大口ロットの方が1枚あたり単価がより安くなる傾向はもちろん変わってはいませんが、小口ロットのケースでも、今では1枚あたり単価はそれほど高くはならないのです。
オリジナルデザインのプリントネームタグは100枚から
小口ロットのオリジナルデザイン・プリントネームタグについては、キリのいい数字で「100枚から」としている業者が多いようです。それよりもすくない枚数でも受注できるけれども、総額では最少ロットのケースとあまり大きく変わらないことが多いです。
もちろん、一度最少ロット以上の数量で発注したことがあり、業者側にすでにデータがあるプリントネームタグの追加生産であれば、それなりに安くできることもあります。が、オリジナルで新規データを入稿・製作させるためには、基本的には「最少ロット100枚」が目安です。
プリントネームタグのテープ素材
プリントネームタグに使われる布テープ素材にはいくつかの種類があります。それぞれの種類に応じて印刷適性や加工性のちがい、多色表現の幅が変わってきますし、できあがりの風合い、雰囲気も変わってきます。
化学繊維系(ポリエステルなど)
ポリエステルサテン、タフタ、ツイルなどによるテープ素材です。カジュアルで親しみやすい雰囲気にも、逆にゴージャスな高級感にあふれたものにも仕上げられます。化学繊維はヒートカットやレーザーカットで切り離すと端がほつれなくなり、機械処理に有利です。小ロットでもコストが高くなりにくいのです。
天然繊維系(綿、麻、シルクなど)
綿ローンに代表されるコットン、リネン混紡系、シルクなどの天然由来素材です。ナチュラル感をアピールしたい商品に向いています。化学繊維系とは異なりヒートカットやレーザーカットがおこなえないので、端がほつれやすくなる点が要注意です。
メタリック系(金銀パール調など)
金銀パール調などのメタリックな風合いを出せる素材を化学繊維に練り込むこともあります。織りネームタグにくらべて非常に繊細な表現が可能です。光沢がキラキラしすぎない方が良い場合は、サテン系の金茶を選ぶこともできます。
シースルー系
オーガンジー、ジョーゼットなど、透け感のある素材です。非常に細い糸を用いた繊細で上品な仕上がりも期待できます。素材の種類によって透け感、繊維質感、印刷適性などが変わります。ねらい通りの表現を究める選択肢が豊富です。
エコロジー系(オーガニックなど)
オーガニックコットン(有機栽培綿)や、リサイクルPETボトル由来のエコロジー系素材も利用可能です。環境省や経済産業省の認証を得た素材を選べばエコロジーコンシャスな製品イメージのアピールに活かせます。
パルプ系紙素材・その他
ウェスタンクロス、ウォッシャブルペーパーなど、パルプ系由来の素材もあります。
そのほかにも、テープ素材そのものをオリジナル素材で織り上げるという選択肢もあります。この場合、素材質感、印刷適性など細かい特性がちがってきますので、仕上がりについては業者としっかり相談した方がいいでしょう。
プリントネームタグの印刷方法・種類と特徴
プリントネームタグの印刷手法にも何種類かがあります。それぞれによって特徴があり、「どんな用途に」、「どんなイメージで」、「何を重視するか」によって使い分ける必要があります。仕上がりの風合い、雰囲気、コストはケースバイケースで、業者との要望・提案のやりとりを十分におこなうことが大切です。
スクリーン印刷
スクリーン版(孔版)を用いて印刷します。もっとも一般的な手法と言えるでしょう。
表現精度は高く、鮮明な色描写が可能です。
印刷面積が広くなるとタグ自体が硬くなることがあります。
凸版印刷(シーリングプリント)
活字による活版、ないしは大判のスタンプのようなイメージを持つ凸面の印字サイドを素材テープに押しつけて印刷する手法です。スクリーン印刷にくらべるとインク量がすくなくなり、印刷面積が大きくなってもタグが硬くなりにくいところがあります。表現精度も十分です。
生地色の影響が透けて出ますので、生地色が濃く印字・図柄色が薄いプリントには向いていません。
昇華転写印刷
多色・小ロットの発注に適した印刷手法です。版が不要なため、小ロットで短期納品が可能になります。
そのかわり、あまり特殊な色表現、金銀パール調などは利用できず、製法上、若干のにじみが生じるので、あまり細かい字や線の表現には向きません。また、素材はポリエステルに限られます。
シリコン印刷
レディーメイドの色シリコンインクで印刷する手法です。スクリーン印刷などと組み合わせることもできます。厚盛りもデザインによってはできるようになります。
インクジェット印刷
昇華転写印刷と同様、オンデマンド印刷手法として版不要で印刷できます。多色小ロットの発注に向いています。注意点も昇華転写印刷と同じで、特殊な色は使えず、金銀パール調は不可で、若干のにじみが生じるので、細かい字や線の表現には適していません。
その他の特殊な印刷手法
そのほか、箔を用いた印刷、発泡印刷など、特殊な印刷手法があります。しかし、小ロット向けとは言えません。
プリントネームタグの折り曲げ加工
織りネームタグは、織り上がった段階では1枚1枚が連続的につながったテープ状になっています。これを実際に製品に縫い付けるには、熱処理など必要な処理をほどこしたあと、1枚ずつ切り離すことになります(つながったままのロール状で納品される場合もあります)。そして切り離した1枚の織りネームタグを製品に縫い付けるにあたって、タグを折り曲げることが多いのですが、この折り曲げ方にもいくつかのパターンがあります。
EF(両端折り曲げ加工)
織りネームタグの両端を折り曲げる加工です。もっとも基本的な折り曲げ方です。両端の折り返して重なったところが縫い代になります。襟元の内側に縫い付けるタグによく使われます。
CF(二つ折り曲げ加工)・ピスネーム
長さの半分の位置で折りたたみ、両端の重なった部分を縫い代にする折り曲げ加工です。Tシャツの襟元や左脇腹あたりの内側に縫い付けるタグによく見受けられます。
SC/SHC(ストレートカット・ストレートヒートカット)
もっともシンプルな加工で、単純にカットするだけです。化学繊維製のタグはふつうヒートカットします。切り口からほつれないようにするためです。綿など自然素材製のタグの場合は、切り口からほつれやすくなりますので、EF(両端折曲げ加工)の方が適しています。
MHF(マンハッタン折り加工)
タグ全体を二つ折りにする点ではCF(二つ折り曲げ加工)に近いですが、片方の端を浅く折り曲げ、他方の端をさし込んで「ふた」にする形にします。ちょうどバーやスナックでもらえる「ブックマッチ」のような形にして、折り曲げた端を縫い代にして縫い付けます。二つ折りにしたタグを開いたり閉じたりできるパンフレットのようなイメージです。
BC(ブックカバー折り加工)
EFとCFの組み合わせです。すなわち、タグの両端を小さく折り返し(EF・両端折り曲げ加工)、そのうえで半分の位置で二つ折りにします(CF・二つ折り曲げ加工)。両端折り+二つ折りで、結局4枚重ねになったところを縫い代にして縫い付けます。縫い付けの強度が非常に高いので、製品の使用上、動きや摩擦が生じやすい箇所への縫い付けに向いています。
この形式はCF加工のプロセスが手作業になります。そのため二つ折りの精度には若干のばらつきが出ます。
MIF(マイター折り加工)・舟形
タグの両端を90度の角度をつけて上向きに折り返し、吊り下がったループ状の形で縫い付ける加工法です。織り巾が細く、全体的に長いイメージのタグに向いています。ユーザーによってはフックにひっかけるループとして使います。